えひめこども科学新聞とは

ジュニアドクター育成塾愛媛大学では,おもしろかった,たのしかったで終わらないように,さまざまな方法で理解を深めています。

今回は,そのなかのひとつ,えひめこども科学新聞について解説します。

1 えひめこども科学新聞とは 

えひめこども科学新聞とは,講座で体験した内容について,3〜4人1組のチームごとに,ひとつの紙面を作成する*新聞です。チーム内で話し合い,役割分担して記事を執筆して,統一感のある紙面を作成します。

図1 えひめこども科学新聞ひな形(A1用紙に作成します)

2 えひめこども科学新聞を作る理由 

えひめこども科学新聞にはふたつの目標があります。

(1) 新聞作成を通じて,各テーマで身につけたことを振り返って理解を深め,また伝える力をみがくこと。

(2) 他者とのコミュニケーションを通じて,新たな視点で物事を見ることができるようになること。

2−1 説明することは理解を測る最も良い手段である(リチャード・ファインマン博士) 

Richard Feynman博士(ノーベル物理学賞受賞者)は,以下のように述べています。

The ultimate test of your knowledge is your capacity to convey it to another. –Richard Feynman

図2 リチャード・ファインマン(出典:Wikipedia)

「知っている」と思っていることを「理解しているかどうか」を測るためには説明することが一番です。とくに「知識のない他人が理解できるように説明できる」できるなら,あなたはソレについて完全に理解していると言えるでしょう。

2−2 難しい言葉は使わない 

「知識のない他人が理解できる」ことが指標ですから,専門用語はできるだけ使わないようにしなくてはなりません。

図3 難しい言葉では伝わらない

もしかしたら,あなたは「専門用語を連発する」説明に憧れがあるかもしれません。たしかに研究者同士で会話するときは,専門用語が飛び交って分野外の人にはサッパリということはあります。しかし,そういうときも「互いに理解できる言葉」で話しているのであって,「他人に理解できない言葉」を使っているわけではありません。相手の理解度に合わせて言葉を使い分けることが重要です。

2−3 簡単に説明することは難しい 

簡単な言葉,誰にでも伝わる言葉で何かを説明するのは難しいものです。とくにそれが専門的なことであればあるほど,その難しさは大きくなります。

図4 簡単に説明するのは難しい

たとえば,科学者が使う用語,科学用語は意味がキッチリと決められています。あなたが日常で使う言葉とは,まったくちがっているので,「なんとなく」や「あいまいな理解」で言葉を使うことができません。ふつうの人の言葉づかいに対して,科学者が「その言葉の使い方はまちがっている」と指摘するのは,これが原因なのです。科学者は互いの理解を高めるために発言しているのですが,「科学者は言葉づかいにうるさい」と誤解されるのは,このちがいを知らないからかもしれません。 こういった事情で,専門用語を使わずに説明するためには,専門用語のもつ圧縮された情報を展開して,誰にでも理解できるように整理しなければならないのです。これはなかなか難しい作業です。なぜなら言葉を置き換えるためには,専門用語の定義を理解していなければならないからです。つまり,この作業を行うことは,あなたの理解度を測る良い方法なのです。

2−4 伝わらないと意味がない 

あなたが,どんなに素晴らしいアイディアを持っていても,どんなにスゴイ力があっても,それが他の人に伝わらない限り,それらを活かすことはできません

図5 伝わらないと意味がない

研究者の世界は,ピア・レビューによって成り立っています。ピア・レビューとは,おなじ研究者によって評価されるということです。そのため,すくなくとも,おなじ研究者に理解できるように,あなたのアイディアを説明できる必要があります。そして,現代では研究者といえども象牙の塔にこもっていることはできません。 あなたの研究を国民の税金で支援してもらうのであれば,知識のない人にもわかりやすく成果を説明し,成果を社会に還元できる必要があるのです。

2−5 新たな視点を手に入れよう 

あなたに見えないものが他人には見えているかもしれません。物事を多角的な視点で見るための第一歩は,他の人にはどう見えるのかを聞くことです。

図6 話し合いで新たな視点を手に入れよう

物事を一面的に見ているかぎり,あなたの理解はある一定上深まることはありません。とくに新たなものを生み出すためには,物事をいろいろな視点で見ることができることが必要です。どうすれば,あなた以外の視点を知ることができるのか。答えは簡単です。説明し,対話すればいいのです。対話する相手が研究者だった場合は,研究の視点から検討できるでしょう。では,研究者ではない場合は? その場合は,まったく新しい視点から,あなたの研究を検討することができるかもしれません。 他人に説明することは,あなた自身にとっても必要なことなのです。

3 まとめ 

自分が知らないことを体験・取材し,高次の概念を分解して再構成して,読者にわかりやすい形に直す,新聞作成は,理解を深めるために最適の方法なのです。

図7 新聞は理解を深める

また,ひとつの紙面を複数人で執筆することで,協働作業を通じた対話が起こり,新たな発見につながることが期待されます。

図8 協働から新たな視点を得る

今回,9チームが紙面を作成しましたが見出しはそれぞれちがっています。新たな視点によって互いに刺激し合って,目標を達成してくれることを期待しています。

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