No.006 衣笠 哲也(岡山理科大学 工学部 機械システム工学科教授)

岡山理科大学 工学部 機械システム工学科教授
ロボット工学研究室 衣笠哲也氏

10月21日のジュニアドクター育成塾愛媛大学第5テーマは「重力だけで歩く2足歩行ロボットの研究」!

最新の2足歩行ロボットについて学ぶだけでなく、文字通り、動力を使わず重力だけで歩くことができる不思議なロボットを、実際に作って動かしてみました。

当日の様子(動画1:20秒バージョン)

当日の様子(動画2:1分バージョン)

今回の科学プロ図鑑は、講師を務めていただいたロボット研究で著名な岡山理科大学の衣笠教授にご登場いただきます。

【目次】
1 子どもころはどんなことに興味があった?
2    子ども時代の将来の夢は?
3 なぜこの仕事をするようになった?
4   今の仕事を選んだ理由は?
5    今の仕事の分野は?
6 仕事をしていて一番嬉しい瞬間は?
7 仕事をしていて一番大変だと思うことは?
8 同じ仕事を目指している子どもたちに,いま頑張ってほしいことは?

1 子どもころはどんなことに興味があった?

 プラモデルとか作っていました。ガンダムとか車や飛行機、あと帆船とか色々作っていました。小さいころは動くものを作っていて、最初は「ただ置いておくプラモ作って何が楽しいんや」って思っていたんですけど、だんだん飾っておくプラモデルの方も作るようになりましたね。あとは部活とかではないんですけど、友達と一緒に野球もしていました。その辺の空いているグラウンドとかで、軟式よりももっと柔らかいゴムボールで野球していました。

2    子ども時代の将来の夢は?

 将来の夢かぁ(笑)。今日の参加者くらいの歳になるとあんまり意識していなかったんですけど、もっと小さいころは宇宙飛行士とかになりたいと思っていた覚えがあります。小学校に入学する前くらいに図鑑とかで「サターン*1」、月に行くロケットとかを見て、ロケットに乗って宇宙に行きたいって思っていたかな。もう一つあった。恐竜博士。やっぱり図鑑とか見て恐竜の化石を発掘したいなって思ってましたね。

*1サターンロケット…アメリカ航空宇宙局 (NASA) が開発・運用していたロケット。アポロ計画で、計12人もの宇宙飛行士を月に送り込んだ。

3 なぜこの仕事をするようになった?

 こういう職に就きたいとか、何になりたいとか、あまり明確にはなかったんですけど、大学に入学した時に僕の学科で教えていた大須賀先生*2の研究を面白いと思って研究室に所属して、研究していくうちにどんどん面白くなっていって…。それで大学院に進学したんですけど、博士までいってしまうと自然と研究者を目指すことになるんですね。それでも最初は高専*3で教鞭をとっていたんですけど、やっぱりもっと研究したいと思って大学に移りました。

*2大阪大学大学院工学研究科 大須賀公一教授。ロボットをつかって知能の源泉をさぐる研究をされています。http://www-dsc.mech.eng.osaka-u.ac.jp/

*3高専…工業高等専門学校。日本のモノづくりを支える優秀なエンジニアを育成する教育研究機関。NHK高専ロボコンが有名。

4   今の仕事を選んだ理由は?

 企業で働くっていうのは色々と拘束されて窮屈に感じられて、そこで働くっていうのがあまりイメージできなかったんです。一方で、大学での研究って自分で自分のスケジュールをある程度組めるから自分のペースで進められるし、どちらかというと教員って思っていました。そこで選択肢として大学で研究者として、そして教員として働くっていうのを選びました。

5    今の仕事の分野は?

 分野としては、いわゆる「機械系」ですね。その中のロボットについて研究しています。一言でロボットと言っても、ロボットには機械の部分、動かすためのモーターとかの電気電子系のデバイス、あとはプログラムとかの情報系、最近だと生物学とか、今回みたいに教育学部とコラボする機会もあって、色々な学問分野と繋がっているんですけど、その中でも私は機械系のロボットを専門としています。

6 仕事をしていて一番嬉しい瞬間は?

 作ったロボットが上手く動いて、それが世の中にないようなロボットで、さらにおもしろい結果を得た時です。僕が開発したムカデのロボット*4、元々は大須賀先生のアイデアで一緒に開発することになったものなんですけど、それを開発した時は特にそう思いましたね。まずイメージに合ったロボットができるかどうかっていうのがあるし、じゃあイメージに合うものができてそれが期待通りの動きをしたら良いのかというとそうではなくて…。期待を超えるような成果が得られるっていうのがロボットを作った時に求められるんです。ムカデのロボットを動かした時、ただ動くだけじゃなくてちゃんとその辺を勝手に動き回るし、生物っぽい気持ち悪いような、ムカデと同じような動きもできたんですね。期待した結果、さらにそれを上回るような結果が出るようなロボットができた時は、本当に凄く嬉しいです。

*4 ムカデロボット… i-CentiPot 大阪大学大須賀公一先生,東北大学石黒章夫先生らと共同で開発したロボット。https://www.youtube.com/watch?v=ngpEmJKz0Qc

ムカデロボット工作セット(タミヤ)はi-CentiPotがモデル。https://www.tamiya.com/japan/products/70230/index.html

7 仕事をしていて一番大変だと思うことは?

 凄く頭の良い人がたくさんいることですね。ロボットってやっぱり理論の上に成り立っているものだから、数学とか物理とかが求められるし、できる人っていうのは青天井で、上には上がいるんです。僕らも文系の人から見ると、数学できるように見えるかもしれないけど、そんなのもう下の下の下で。頂点の方にいる人たちは、まあ言うなれば宇宙人みたいな人たちなんだけど、そういう人たちと研究の競争をするんです。圧倒的な能力差があるからね、数学には。能力の違いを見せつけられるような気がして、心が折れそうになる時があって、まあ本当に嫌になりますよ(笑)。それでも僕はモノを作るのが得意で、それは彼らにはできないことだから。モノづくりだけだったら企業に勤めている人とかもっとできると思うけど、僕らはその中間のような、数学とか物理とかをベースにした解析もできるし、モノも作れる。そこに存在意義とか居場所を見出すことができるんですけどね。

8 同じ仕事を目指している子どもたちに,いま頑張ってほしいことは?

 一つは数学とか理科系科目をしっかり勉強すること。やっぱり必要になってくる能力ですからね。もう一つは、モノづくりができないといけないので、小さいころからのモノを作る経験。僕だったらプラモだったり、あとはレゴとかのブロックをいじったりとか、そういうことをしつこいくらいやっておくことですね。そういう経験がある子っていうのは、何か他のモノを作るときも早く作れるし、上手く動かせられたりするんです。プラモやレゴ以外にも、ゲームをプレイするだけじゃなくて、プログラムとかを自分で実際に組んで作ってみるっていうのもいいですね。最近はネットで簡単なプログラミング用のソフトならフリーで手に入ったりもするからね。ソフトウェアとメカと電気電子デバイスを使って何かを作る、いわゆるエンジニアリングですね。何でもいいんだけど、そういうモノをつくるっていう経験と、それを理屈で表すことができるように勉強すること、この両方をやっておいてほしいです。

取材者:
スチューデント・キャンパス・ボランティア
メディアサポーター出版部
写真・文 杉山未来

スチューデント・キャンパス・ボランティア公式HP:
http://scvinfo.csaa.ehime-u.ac.jp/dantai/mspt/

衣笠先生のようなロボット研究の第一人者でも、自分より頭の良い人がたくさんいると思っていらっしゃることに大変驚きました。でもそう思いながらも、モノづくりと解析の両方をよく知っているという強さを武器に、世界の天才たちと戦っているんですね。

みなさんはどのように感じましたか?

貴重なお話をありがとうございました。

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